「私は美人だったから性格が悪い」と彼女は言った
昨年の夏、仕事の都合で6つ上の先輩と九州で半月ほど過ごした。
ある日彼女が私と他愛のない話をしている時
「美人は性格が悪い。私は美人だったから今も性格が悪い」
と言った。
一瞬、時が止まった
私は生まれてから今まで自分を〝美人〟だと思ったことが一度もない。
自分の容姿で笑いを取れるほどふっきれてもいないから、自分を美人と名乗ったこともない。
自分の容姿に対しての肯定的な発言は私の中で禁句ワードであり、禁句中の禁句である言葉を、目の前にいる、6つ上の女性が決して冗談ではなく、当たり前のように言うので、驚いてしまったのだ。
私が学生時代仲良くしていた、学年一の美人だったNちゃんの話に対して言った言葉だった。
「美人は自分の周りにブスを置きたがる。自分が一番かわいく見えるように引き立て役で固めるんだよ」
「私は美人だったから勝手に人が群がってきたしクラスの女子もちやほやしてきた。」
自分が遠回しにブスだと言われていることより、彼女が漫画の中のお金持ちなお嬢様が言いそうなセリフをつらつらと言うもんだから
「現実でもこういうこと言う人っているんだ!」
と驚愕と興奮を覚えた。
その一件以来、彼女の発言を注意深く聞いてみることにした
彼女は中学時代に戻りたいという
「美人でモテたから」
彼女は高校時代に戻りたくないという
「モテなかったから」
彼女は男友達がいないという
「恋愛になってしまうから」
彼女は女子高生の団体の中にいるおとなしそうな子が私達に道を尋ねてきたときに言う
「ブスは役に立たないとグループに入れてもらえないから必死だね」
写真は自分よりブスとしか撮らないという
「自分を輝かせたいから」
20代で結婚することがゴールという
「行き遅れたら終わり。女の幸せは結婚だから」
彼女は高齢出産をしたくないという
「歳老いた母親が嫌だから」
気持ち悪いくらい逐一彼女の発言を覚えているのはどの発言も私が一度も他人に言ったことがない、言うべきではないと思っているものばかりだったから
人の性格は10歳までで決まると何かの本で読んだことがある。(諸説ある)
彼女はきっと性格が形成されるまでの間、周囲から蝶よ花よと可愛がられたのだろう。
可愛いこと、美しいこと、異性からモテること、同性から羨ましがられること
それが彼女の全てだ
だから30歳に差し掛かった今、年齢とともに変化していく自分の見た目に耐えられず過去の自分にすがり、他人を見下す発言をする。
私は美しかったことなんて一度もないけれど、〝美人だった〟彼女になりたいとは思わない。
形ばかり気にする彼女の見た目も、生活も、仕事も、結婚も幸せには見えないし
女性であることに永遠に囚われ自分の下ばかりを探す人間にはなりたくない。
ここまで書いといてなんだけど勘違いして欲しくないのは私は彼女のことが憎くて仕方ないから書いている、などではなく、自分とは相容れぬ彼女が面白かったから書いている。
世の中いろんな考えの人がいて楽しい